ツバメはなぜ去年の巣を覚えている?

前の巣を使うのは親ツバメ。 その確率は五〇~六〇パーセントと言われています。 ツバメは高いところから見た景色をちゃんと覚えているのです。なにしろ巣をつくるとき に、枯れ草の切れ端や泥の固まりを何十回も運ぶのですから、このとき巣の場所をしっかり覚え込むことができるのでしょう。

 

渡りのときも、この記憶がしっかり役立ちます。ツバメは体の中に、自分だけにわかる体内時計と呼ばれるものを持っていて、太陽や星座を見ては「この時刻に太陽がこの方向に見 えるから、こちらが南」といった判断をしながら飛んできます。

 

やがて果のある町に近づくと、去年の記憶が呼び起こされて、前に使っていた巣にたどり着けるというわけです。


ただし、空が曇っているときは、方向が決められず群れがバラバラになってしまうことがありますし、途中で力尽きてしまうのもいますので、この程度の確率になるのでしょう。


なお、去年生まれた若いツバメは、新しい巣をつくります。家の軒下にツバメが巣をつくったら、来年も帰ってくることを信じて、そのままにしておいてあげてください。

なぜ汗かきや赤ちゃんばかりが蚊に狙われる?

同じ場所にいても、自分ばっかり蚊に刺されると嘆く気の毒な人がいます。これは、その人の思い込みではなく、科学的にも正しいこと。

 

蚊が人間を刺すとき、「これは腕だ、足だ、女の子だ」などと目で確かめてから吸うわけではなく、体から立ち上る何かを手がかりに近寄ってくるのです。


その何かとは、まず水分。汗をかいて水蒸気が立ち上っている肌を、蚊は敏感に感じ取ります。そして、口や肌から出る二酸化炭素や乳酸。遠くからでもわかるので、近づいて人の体温を感じ取り、肌であることを確かめてブスリ。


というわけで、汗かきの人、体温の高い人は蚊に刺されやすいことになり ます。だから、新陳代謝の激しい体温の高い赤ちゃんは、攻撃の的です。

 

また、お風呂上がりや、運動した後も要注意。


睡眠中に、顔の周りを飛び回る蚊にはまったく閉口しますが、そのわけは鼻から出る二酸化炭素だったのです。


なお、同じように刺されても、やたらに腫れる人と腫れない人がいますが、繰り返し刺さ れていると、肌が慣れて免疫ができ、あまり腫れなくなるようです。

冷たいものを一気に食べると頭が痛くなるのはなぜ?

炎天下を歩いているとき、「かき氷」の看板は素通りできないもの。引き寄せられるようにお店に入って、「氷いちご」をほおばります。その冷たいこと、こたえられません。でも、 一気にかき込んでいると、そのうち頭がキーンと痛くなってきます。なぜでしょう。


胃や食道に来ている神経は、背骨にある脊髄という太い神経の束とつながっていて、それが脳まで行っています。胃が急に冷やされると、すぐに冷たさの信号が神経を伝って脳に届き、そこで痛みとして感じられるのだろうと考えられています。


その痛みも、額だったり、耳のすぐ前のこめかみだったり、頭の横全体だったりと、人によって感じる場所は違うようです。

なぜカツオだけ一本釣りで釣るのか?

カツオの一本釣りは、男の戦場。釣られまいとするカツオとの一騎打ちで、機械化された 現代に似合わない熱い血潮を感じさせられる漁法です。

 

カツオは二〇~二二度の水温が好きで、春から夏にかけて黒潮に乗って、南のほうから日本の近くまでやって来ます。そのときを狙って漁が行なわれるのです。


カツオの群れに遭うと、生簀に入れておいた生きたイワシを海にまいてカツオをおびき寄せ、そこに釣糸を垂れて一匹ずつ釣っていきます。これが一本釣りです。

イワシやサバ、アジなどは海面近くに群れをつくってゆっくりと泳ぐので、船に近づいた 群れを網で包むようにして捕まえることができます。しかし、カツオは泳ぐ速度が速く、もたもたしていると、あっという間に逃げられてしまいます。

 

その点、一本釣りなら糸を垂らすだけで済みますから、準備に手間取ることがないのです。 しかし、最近は、目の荒い大きな網でカツオを捕るように工夫がされ始めています。

レンコンの穴は何のため?

ハスは大昔から、大切な食べ物でした。根のレンコンだけでなく、種も食べられたので、 お米などと一緒に田んぼの中でつくられてきました。タンニンや鉄分を含んでいて止血作用があるので、すりおろした汁を飲むと、胃潰瘍や子宮出血、喀血などにも効き、また、絞り汁は咳止め効果があるとされてきました。

さらに栄養面でも、1〇〇グラム中に、ビタミン Cが五五ミリグラムも含まれているという、優れものでもあります。 そんなレンコンの特徴と言えば、いくつも並んでいる穴。このお陰で、お料理でもミソとカラシを詰めたカラシレンコンとか、挽き肉を詰めて、揚げたり煮たりして楽 しむことができます。


さて、その穴ですが、本来は空気の通り道。水底の泥の中に横たわっているレンコンが空気に触れるための大事なものなのです。この穴が、地上の茎や葉にあいている小さな穴とつながっていて、空気のほか、水蒸気の通り道にもな っています。

レンコンの旬と言えば秋から冬にかけて。
ふだんは細いハスの根が、冬を越すために栄養を溜め込んで根の先のほうの三~四節だけが急に太くなるのです。春になると芽を出すのもこの部分です。

紙は木からつくるのになぜ「糸」偏か?

紙は今から千九百年も昔に中国で発明されましたが、それまでにも紙に似たものが使われ ていました。それは、絹の布です。


絹の布はその頃から着物の材料として貴重なものでしたが、筆で字が書けるので紙の役割もしていました。絹は、カイコがつくったマスから取った糸でつくるのはご承知の通り。その手触りは、とても滑らかです。

 

「紙」という字の「糸」は、生糸をより合わせてねじっている形から来ているもので、糸偏 の右にある「氏」は「滑らか」という意味。つまり「紙」という字は、「絹糸でつくった滑らかな糸」ということを表わしているのです。


紀元前二四〇〇年、古代エジプトでは、パピルスという湿地に生える草の茎から紙に似た ものをつくっていました。また中世ヨーロッパでは羊の皮をなめした羊皮紙が広く使われていました。


今では、木を砕いて細い繊維にときほぐしたもの、つまりパルプからつくられています。「糸」には、「細いもの」という意味もあるので、今の紙にも、この字をそのまま当てはめてもいいことになります。

肘を打つとしびれるのはなぜ?

肘鉄を食らうのは痛いものですが、肘を机の角などでぶつけたときにも相当なもの。目の玉が飛び出しそうです。

これは、肘のところに神経の束が通っているためで、神経は体内のあちこちから、ちょうど木の枝が根元に向かって集まり、太い枝となり、幹となっていくように、神経の細い筋が集まり束になっているのです。


肘を通る神経の束は表面に近く、その周りは固い骨ばかりなので、肘を打つと、神経の束にまともに触れてしまってしびれるのです。