紙は木からつくるのになぜ「糸」偏か?

紙は今から千九百年も昔に中国で発明されましたが、それまでにも紙に似たものが使われ ていました。それは、絹の布です。


絹の布はその頃から着物の材料として貴重なものでしたが、筆で字が書けるので紙の役割もしていました。絹は、カイコがつくったマスから取った糸でつくるのはご承知の通り。その手触りは、とても滑らかです。

 

「紙」という字の「糸」は、生糸をより合わせてねじっている形から来ているもので、糸偏 の右にある「氏」は「滑らか」という意味。つまり「紙」という字は、「絹糸でつくった滑らかな糸」ということを表わしているのです。


紀元前二四〇〇年、古代エジプトでは、パピルスという湿地に生える草の茎から紙に似た ものをつくっていました。また中世ヨーロッパでは羊の皮をなめした羊皮紙が広く使われていました。


今では、木を砕いて細い繊維にときほぐしたもの、つまりパルプからつくられています。「糸」には、「細いもの」という意味もあるので、今の紙にも、この字をそのまま当てはめてもいいことになります。